今年は元旦に能登半島地震があり、9月には豪雨災害と、石川県にとっては非常に厳しい年になった。振り返れば本当にたくさんのたいへんなことがあったし、それは現在進行系で今も続いている。(これからも続くだろう)
個人としても法人としてもさまざまな支援やチャレンジがあり、ここでは書ききれないことも多いのだけど、まずは自社のことに焦点を当てて、なるべく前向きなかたちで振り返っていきたいと思う。
仲間が増えた
2024年にあったことを振り返ると、まず真っ先に挙げられるのはメンバーが増えたこと。昨年の今ごろはほとんど社長の私1人でやっていたが、この1年でフルタイム4名の会社になった。加えて、非常勤の顧問(アドバイザー)お2人にもジョインしていただき、もともと支援してくださっている士業の方々(税理士、弁護士さんなど)や業務委託の方々を含めると10名を超える仲間に恵まれた。これはうれしい誤算だった。
中でも20年来の上司でありメンターでもあるエグゼクティブ・アドバイザーの佐藤さん、そしてこれまた付き合いの長い田中さんのお二人に助けていただけるのは心強い。社員もみな石川県在住。バックグラウンドもさまざまの個性的なメンバーで、こんな風にオフィスがワイワイしたり、Slack や Notion が活発になっているという光景は 1年前は想像していなかった。
森野さんのブログ↓にも取り上げていただいたが、2022年に石川県に移住してからいろいろと思うところがあり、雇用はなるべく地元を優先することにした。これは人口減少社会でありながら都心一極集中により地価や運営費(個人でいえば生活費)が高騰していくアンビバレントな潮流は残念ながら世界的な傾向なので不可避だけど、スモールビジネスやスタートアップはそもそもそういうマクロ情勢に最適化させる必要がないし、むしろ郊外に拠点を持てる仕事を積極的に生み出したほうがマクロで見てもバランスさせやすいという考えにリアリティが持てたのが理由だ。
自社だけでできることは少ないし、何かを大きく変えたいと思う気持ちは正直あまりないのだけど、だからといって自分の方針を諦める必要も別にない、という静かな決意のようなものができたのが2024年だった。
お客さまが増えた
続いて、お客さまも増えた。新たにこ゚縁をいただいたお客さまには本当に感謝している。
LIFT は「運用型広告支援」「インハウス支援」「スタートアップ支援」という3つの柱を掲げているけれども、これは便宜的にそう言っているのであって、やっていることはどれも実は大して変わらない。相手方の事情によって提供できる価値が変わるのでそれに合わせて呼び名が多少変わるというだけで、基本的には応援したい企業のサービスや商品を世の中に伝え、それがそのまま世の中のためにもなっていくという軸がぶれなければ何でもいいのだと考えている。
短期的なプロジェクトもあれば、短期的なプロジェクトから始まって中長期のお付き合いにつながることもある。LIFT は規模としては THE・零細企業なので、短期的な収益性やユニットエコノミクスを厳密に管理するフェーズにはないから、とにかく目の前のご縁を一生懸命つないでいけばいい。やることがとてもシンプルな会社なのだ。キャッチコピーの「Make it accessible」をまず自らの事業で体現すればいいのである。
結果的にそれがお客さまの成長だったり取引の継続だったりにつながるはずなので、仮に将来的に企業規模が大きくなれたとしても、変わらずに継続していくべき姿勢だと考えている。
知ってくださる人が増えた
知ってくださる人も増えたと思う。端的にコーポレートサイトのトラフィックが増えた。
2022年以前は単なる個人事務所ということもあり(他の会社の経営もしていたので)、LIFT ではあまり大したことをしてきていない。だから知り合い以外には完全に無名の個人プロジェクトみたいな会社だった。
個人でやるのは気楽な反面、このままだと先に挙げた決意と実際の行動がぜんぜんリンクしていないよな〜ということで、2024年はアウトプットを増やすことをまずは目標にした。ブログ記事がメインになるが、2023年に出した記事 28本に対して、2024年はちょうど 2倍の 56本を書いた。その中には私以外のメンバーが書いてくれた記事 8本も含まれているので、自分だけでは達成できなかった数字である。
他にも ECzine で新たな連載を持たせてもらったり、ツエーゲン金沢のアンバサダーである辻尾さんの「ツジオジオ」を手伝わせてもらったりと活動の幅を広げることができた。
GA4 で見ると前年同期比でエンゲージメントしたユーザーは約250%増(約3.5倍)になり、平均エンゲージメント時間も25% 増になった。元が少ないので自慢できるような数字ではないが、それでも増えるのは単純にうれしい。
ちなみにチャネルの内訳で見ると、LIFT の記事は SEO 的なタイトルはほとんど意識しないので、オーガニック検索の成長率よりも、ダイレクトやソーシャルのほうが存在感を増している。全体の成長率は上述のとおり +250% くらいだが、ダイレクトとソーシャルはそれぞれ +500% の成長率になるので、やはり多くの方に共有してもらったことが閲覧増につながっている。
これを SEO の相対的重要度の低下と見るかどうかはその人の代表する立場によって異なると思うが、少なくともたくさんの方に興味を持っていただくようなインサイトを引き続き提供していくことが求められるのは間違いないだろう。
どうしてきて、どうしたいか
2024年のふりかえりを受けて、最終営業日の納会で LIFT がこれから「増やしたいこと」を3つ挙げてみた。
まず1つめは Capability(できることを増やす)を挙げた。個人から組織へとトランジションしていくことは、単細胞から多細胞へと変容していくようなもので、一人でできることは限定的でも、みんなで有機的に動き知恵を出し合えばできることが増えるということだ。それを概念ではなく具体性をもって体現していきたい。
このフェーズは過去の会社でも何度か経験しているつもりだけど、生まれ育った首都圏ではなく北陸の石川県という、私にとっては慣れない土地で同じような流れを再現できるかどうかがチャレンジになる。2024年は少なくともその準備ができたと思うので、奢らず、卑下せず、小さな自信と勇気をもって進んでいきたい。
スライドにも書いたように、みんなで知恵を出し合えばクライアントや仲間を助けられるし、そのためにはインプットとアウトプットを繰り返してメンバーがそれぞれ自分の得意を磨いていくことが大事だ。そうすれば一人ひとりのキャリアも地方にいながら拓くことができるし、一人ひとりのできることが増えれば、結果的に組織としての Capability を広げていくことにもつながる。
もう1つは Opportunity (機会を増やしていくこと)を挙げた。出会いの総量を増やしていきたい。
2024年はありがたいことに LIFT のことを知っていただく機会がそれ以前より増えたと思う。私はブログ記事のようなインターネット上に固定のアドレスをつけられるものを「有形資産」と呼ぶことがあるが、その資産価値は場所と中身と市況によって変化する、不動産や株式などと同じようなものだと捉えている。
LIFT が現時点で生み出せる有形資産は主にブログ記事なので、それらを時間経過に耐えうる内容にして、検索やソーシャルなどのリファレンスを通じてたくさんの方々の目に触れて価値を感じてもらうのが重要だと考えている。
たくさんの方の視界に入るための条件はいくつかあるけれど、まずは常に参照可能である必要がある。次に、参照が参照を呼ぶような、次のネットワークにつながる価値を生むものでないといけない。そう考えると、量が必要なのは記事の本数よりも接触の回数のほうで、記事自体は(もちろん量が多い方がいいけれど)一つひとつの品質やポリシーがカギになる。
信頼を積み重ねるのには時間がかかるが、失うのは一瞬だ。接触回数が多いということは、ポジティブにもネガティブにも一気に拡張していく可能性が高いということでもある。一つひとつを大事にしていきたい。
そして最後に挙げたのは Appreciation(感謝や称賛を増やしていくこと)。Appreciation は物事に対して理解し、認め、感謝するという意味だ。
これが通底している組織は強いし、ない組織は脆(もろ)い。強さの指標はいろいろあるが、一般的に組織というものはリニアに伸びたり大きくなったりはせず、アップダウンを繰り返しながら変化していくものだ。そのバイオリズムが下がっていくときに再び上昇曲線を描くような柔軟性やしなやかさ(レジリエンス)が、私の考える強さの基準だ。そういった振り幅のある変遷を繰り返して、移動平均をとったときにリニアに右肩上がりになっていればよいのだと思う。
ちなみに Appreciation というキーワードは、Google で働いていた2000年代後半に、当時の人事マネージャーに「岡田くんのチームには Appreciation はあるの?」聞かれたことがきっかけになっている。私は当時 30歳前後で若かったので、今から思えばマッチョというか、完全に目がキマっている他者に厳しい自称デキるくんだった。それが顔や態度に露骨に出ていたんだと思う。それを見た人事から「岡田くんは人を褒めてるのかい?」と問われてなぜだか強烈に恥ずかしくなったのを憶えている。恥という感情は記憶と強く結びつく。
あれから幾つかの会社を経験して、さまざまな経営者や会社組織を知る中で、私は Appreciation にあふれた会社にしたいと思うようになった。一人の人間としてそういう場のほうが心地いいというのもあるけど、事業としてもそのほうが合理的だと思うからだ。
Appreciation はコミュニケーションを通じてしか醸成されない。知らない人、赤の他人、よその国で起こっていることは、誰しもが冷徹に無視したり、あるいは無邪気に誹謗中傷できたりしてしまう。けれども、それが知ってる人だったり、一緒にご飯を食べたことがあったり、その人のバックグラウンドを知っていれば、多くの人はおそらく違う態度をとるだろう。
うまくいってない組織の大半はコミュニケーション不全だ。例外はない。だからうまくいきたかったらその逆をすればいいのだ。感謝や賞賛をもって成立する組織は、レジリエンスがある。そしておそらくその前に挙げた2つ(Capability、Opportunity)も備わっているはずだ。
…以上、2024年のふりかえりをつらつらと書いてみた。
2025年も今は想像していないようなたいへんなことが起きるだろうけれど、せっかくやるならよい年だったねと思えるようにしたい。みなさんにとってもよい年であることを願います。