先日、東京の JADE さんのブログに、ある記事が投稿された。
JADE さんは広い意味で LIFT と同業にあたる。あちらの方がカバー範囲が広く陣容も厚いので、弊社のような地方の弱小企業と比べるのは失礼にあたるのだが、「インターネットを主要なチャネルとして扱い、その集客や分析を担っている」という意味ではとても近い会社さんだ。
メンバーの方々には以前からの知己も多く、社長の伊東さんとは先日対談もしている。各分野の著名なベテランが多く在籍する、倫理観と専門性を兼ね備えた技能集団である。
そこに飛び込んだ26歳の若者が、入社して最初に書いたブログが↑上掲のリンクだ。
樫村さんとの面接
その若者は、樫村さんという。(ちなみに弊社内では勝手に彼を「カッシー」と呼んでいる)
記事の最後の方に書いてあるのだが、カッシーは JADE さんより前に LIFT の採用面接を受けている。
その面接時に彼がどう感じたかを、記事にそのまま書いてくれている。せっかくなので該当箇所をまるっと引用させていただく。
余談だが、自分は転職活動において、広告運用業界の第一線でご活躍されている岡田さんが代表を務める金沢の LIFT合同会社 を最初の応募先とした。JADEを選んだ理由と同等の魅力を感じていたからだ。そこでの岡田さんとの面談がとても印象的で自分の選択の後押しとなった。
詳細は省くが、面談の最後に「君は若いんだし、いったん東京で働いてみたほうが良い。もし東京を離れたくなったら、またそのとき相談に乗るから」というニュアンスの言葉を頂いた。東京にレベルの高い環境が多いことはわかっていたが漠然とした不安から落ち着いた環境を求めていた自分へのアドバイスだ。
そして「他に受けようと思っている会社はあるの?」と聞かれ、自分がJADEの名を挙げると、岡田さんは「それはナイスチョイスだね、君に合うと思う」と続けた。
面談を終えた当時は、不採用を婉曲的に伝えるための優しさだったのでは?とも考えていたが、なんだか本心から自分のキャリアを考えて伝えてくださっているようで、強く背中を押された感覚があったのを覚えている。
『「広告運用にまつわる3つの違和感」と、JADEという選択肢。26歳若手運用者の入社エントリ』より
この引用を読むだけでも感じ取れるように、彼はとても聡明な若者である。ちなみに面談して15分後には、私は心の中ですでに内定を出している。(ホントだよ)
でも、ここに書いてあるとおり、私は彼に上京を勧めた。おそらくカッシーは LIFT に来たらフィットしただろうし、活躍もしてくれただろうと思うけれど、一方で、LIFT にとって彼を採用することがその時点で仮にベストチョイスだったとしても、彼の人生の可能性という意味ではベターチョイスくらいだろうなと思ったからだ。いい選択だとは思うけど、おそらく最善ではない。
20代中ばの彼には、残り時間という「未来」がたくさんある。しかも転職理由として記事にも書いているように、広告業界のビジネス構造にフラットな問題意識を持てるような賢いヤツなのだ。面接でちょっと話しただけの縁ではあるが、彼はこのあとの時間の過ごし方次第で一角の人物になる可能性を秘めているし、ぜひそうなってほしい。
そのためには、「どの場所にいるのか」が重要だと考えた。世の中にはとんでもない才能を持つ人間がたくさんいるが、その才能が実際に事を成すかどうかは、いつ、どこに、誰といたのかが非常に大きなファクターになる。
才能が芽吹くには、見晴らしのよい場所(Vantage Point)に身を置く必要があるのだ。
キャリアの Vantage Point についてはこちらの動画でも話しています。ちなみにアナグラムも Vantage Point の一つ!
もちろん、LIFT は広告やマーケティングを志す若い人たちの、北陸地域における Vantage Point とになりたいと強く思っている。ただ同時に、それは LIFT だけでは成し得ない(条件が足りない)ことも知っている。
個人も法人も、時間の経過によって色々なものが変化する。変化するので、最初はフィットしていたことが徐々に違和感に変わっていくことや、その逆もよくある。移り変わっていく方が自然だと思う。
だから、個人の立場からすれば「この場所はそろそろ離れたほうがよい」となる日がいつか来るし、法人側も「この人はここではない別の場所のほうが輝けるのでは」と感じるときが当然出てくるだろう。もっと単純に、上司や同僚とソリが合わない、モンスタークレーマーに当たって心を病んでしまった、育児や介護で就労条件が変わったなど、変化はあらゆるところで当たり前に起きうる。
仮に今いる場所が現時点での Vantage Point だったとしても、次の瞬間には変わってしまうかもしれない。だから残り時間が長く変化に敏感な若い時期ほど、変わったときに選べる選択肢は多いほうがいいはずだ。
そして当たり前だが、選択肢は金沢より東京の方が多い。特に広告やマーケティングにおいては圧倒的に機会の差がある。
転職先で万が一フィットしなかったとしても、東京であれば次がいくらでもある。個社として LIFT が Vantage Point になれたとしても、地域としては東京のほうが金沢よりも見晴らしがいい場所なのだ。
というわけで、
- 賢い若者であれば仮に就業した組織と相性が合わなくなっても、次を自力で探せる
- ただしそれは選択肢がある場所に身を置くことが条件(そもそも選択肢がなければ探せない)
- 北海道にいる彼がわざわざ選択肢の少ない金沢を選ぶ合理的な理由が見当たらない
と判断し、「オレはなんで賢い若者を前にして、 ”ウチに来い” と言わずに ”東京に行け” と言ってるのだ? バカなのか?」と自分で自分を呪いながら、彼に JADE さんを勧めたのである。
※彼の転職理由を聞いて、JADE さんを考えているのであれば筋が通っているので大丈夫だと思ったし、実際に 活躍していると上司の小西さんから聞いているので、このときの自分の選択は適切だったと思っている(涙目で)
地元採用という「制約と誓約」
ここからは余談だが、応募当時のカッシーは北海道にある広告代理店に勤めていたので、最初に届いた履歴書の住所を見て私はこう思った。
「あれ? フルリモートの会社だと思ってるのかな?」 ※もちろん違っていた
確かに弊社はリモート勤務可能だし、求人票にもそう書いてある。実際に月平均3日ほどはリモート勤務になっているのだが、逆に言えば基本的には出社がメインのスタイルである。
これは LIFT が「地元採用」にこだわる理由にもつながるのだが、要するに作りたいのは「雇用」だけではなく、その先の「メンバーのキャリア」や「人生の可能性の拡張」、「その先の地域の活性化」などであって、それを金沢という地方都市で無理なく発展的に達成するには、リモートよりも同じ物理空間を共有したほうが合理的であるという考えが根っこにあるからだ。
※ちなみにリモートガチ勢の方もこの泡沫記事を読まれる可能性があるので念のため書いておくと、リモートを否定しているわけではまったくなく、「LIFT は出社プライマリ、リモートセカンダリが基本方針の会社です」というだけの意味である。リモートはむしろ社長の私からお願いすることがほとんどだし、体調や天候、家庭の事情等でみんなが自主的にリモートと出社を選択することができる
あと、私は『HUNTER ✕ HUNTER』が好きすぎる痛い経営者なので、念能力の「制約と誓約」理論に則り、自らに制約を設け、それを遵守することによって強くなれると本気で思っているフシがある。

広告運用という、リモートに比較的適した業態でありながら地元採用(≒全社員が出社できるアドレスに居住していること)にこだわって出社を促すのは、言い換えれば「全国から経験者を集めて一気に事業を加速させる」ことを選択肢から除外しているという表明でもある。
これが私が LIFT に課した制約の一つだ。
ブチギレ状態絶対時間(エンペラータイム)のクラピカが最強集団の幻影旅団を上回る強さを発揮できるのは、ひとえに彼が自身に課した「制約と誓約」が、非常に厳しいものだからである。
別にクラピカに学ぶ必要はないのだが(何かキレやすいし)、現代の優良企業の多くが過去にさまざまな制約条件を乗り越えるためにイノベーションや効率化を実現してきたという歴史を考えてみても、制約は、超えようとしてもがいていく行動をつうじて時に糧になりうるものだと分かる。
先ほど若者は選択肢は多いほうがいいと書いたが、一方で、仕事や人生を前に進めるには、数ある選択肢を強制的に削っていき、リソースを一箇所に集中する瞬間が必ず出てくる。それが制約と誓約だ。「選択肢が多いこと」と「選択肢を削って絞ること」は、二項対立ではなくおそらくどちらも必要条件なのだろう。
LIFT が自身に課している採用の制約も、今後のビジネスモデルや環境の変化によっていくらでも変わる可能性がある。そういう意味で選択肢が豊富にあると言えるし、突き抜けるならもっと強い制約によって選択肢を削る必要があるのかもしれない。
そんな変化も含めて一緒に楽しめるよう、そして今いるメンバーやまだ見ぬ未来の仲間の Vantage Point になれるよう、引き続き適度にがんばっていきたい。

