2025年3月9日(日)、明治安田J3リーグ第4節「ツエーゲン金沢vs高知ユナイテッドSC」の試合は、ツエーゲン金沢にとって2025シーズンのホーム開幕戦にあたり、かつ弊社 LIFT の冠試合として行われた。
結果は残念だったが、挨拶も(噛みながらではあるが)何とかこなすことができ、会社にとってメモリアルな一日になった。
ノベルティのこと
トップスポンサーではない、単なる弱小企業の LIFT が冠試合をすることになった経緯はここでは省くが、決定から開催日までは(決定当日を抜いて)たったの8営業日しかないというギリギリのタイミングだった。
直前すぎることもあり、決まった瞬間は「キックインセレモニーができればいいかな」くらいの気持ちだった。一般的に、冠試合はいろんなイベントや来場者特典などが用意されることが多いが、ふつうに考えると来場者プレゼントの制作やイベントブースの設営を8営業日で間に合わせるのはむずかしい。
世のノベルティ制作会社の多くは中間事業者というか、注文を受けたあとに工場やメーカーに発注するという形式のところが多いので、早くても入稿から到着まで2週間、営業日で最低10日はかかるのが普通である。しかも来場者プレゼントだと想定すると発注ロットがグッと大きくなるので、そのぶん時間もかかってしまう。だからこの短期間で何かを用意するのは無理だろうなと判断したのだ。
…とは言いつつも、決定の翌日早朝から出張だったこともあり、新幹線の中で「間に合うノベルティはないだろうか」「イベント設営するとしたら何が考えられるか」は検討してみることにした。あとになって「やっぱりできたかも」と後悔してしまう可能性をできれば排除したかったし、ホーム開幕戦で冠試合をやるなんて機会は今後はおそらくない。せっかく東京までの2時間半があるのだから、リサーチするだけしてみようではないか。
そんなこんなで調べはじめてみると、イベント設営はリソース的に無理だが、ノベルティであれば間に合う可能性があることがわかった。中間事業者ではなく、自社工場と専用在庫を持つ会社なら特急で仕上げるプランを用意しているところがある。もちろんグッズの選択肢は限られるし、モノによっては普通に作るよりもだいぶ割高だったりするのだが、在庫さえあれば最短で2-3営業日で制作、一週間もあれば手許に届くようだ。
「なるほど、可能性があるのであれば賭けてみよう。」そう思うと不思議とやる気が出てくるもので、出張のアポイントが終わって到着したホテルの部屋で、一人夜な夜な Illustrator で入稿ファイルを作っていた。(そのあと期日に間に合うことを制作会社に確認して帰りの新幹線の中で入稿した)
なぜステンレスボトルだったか
最終的にできあがったのは、「Zweigen × LIFT コラボステンレスボトル」。ステンレスボトルの中でも最小の 120ml サイズだ。

なぜこのミニステンレスボトルにしたかというと、まず単純に「期日までに作れたから」に尽きる。
特急制作では上述のとおり制作会社側で対応製品を絞っているため、通常のノベルティ制作よりも選択肢が圧倒的に少ない。アイデアを拡げたうえで絞っていくというアプローチは取れないので、限られた時間と選択肢の中から1点を選ぶという作業になる。
ではこの場合、どういうノベルティにするべきなのか?当時の思考回路をかんたんに箇条書きにしてみると以下のようになる。
- ツエーゲンは毎年いくつかの目玉となるプレゼント企画がある(Tシャツ、保温バッグ、ベースボールシャツなど)
- それらはいずれもロットが大きく、デザインもツエーゲンカラーで、スタジアムで使えるものが多い
- いずれも「新規を呼び込む」という目的で作られているので、打ち出しも自然と「先着◯◯◯◯名様」になる
- LIFTも新規を呼び込むという目的に協力したいが、残念ながら弱小企業なので予算が少ない(冠試合は通常はトップスポンサー様がやるもので、弊社のような雑魚企業がやるのは異例なのです)
- 予算が少ないので、先着順にして集客力を引き上げる個数(「もらえるなら行ってみよう」と感じるラインはおそらく3,000個以上だろうか)を制作するのは難しい
- 仮に予算があったとしても、その個数を一週間程度で届けられるアイテム自体がそもそも限られている
- なので、新規を呼び込むという目的はおそらく達成できない。目的を別のところに設定しよう
- 振り返ってみると、24年から本拠地がサッカー専用のゴーゴーカレースタジアムになって観戦体験が向上し、西部緑地公園の頃よりリピーターの数が明らかに増えている傾向がある
- つまり、ファンの継続的な来場(リピーター)が来場者増加の下支えになっている
- 来場者が増えればスタジアムの雰囲気もよくなるので、観戦体験が向上し、それがまたリピートを呼んでいく。グッズなどの周辺の売上も増えてクラブの収益を後押しするだろう
- リピーターにとっては、都度チケットを購入するより、ファンクラブに入ったほうがお得になる(無料チケットやグッズ購入の割引がある)
- であれば、LIFTのノベルティは、新規来場には寄与できないかもしれないが、「リピーターへ報いる」ことと「リピーター予備軍の背中を押す」ことができればよいと考えよう
- 幸いにもホーム開幕戦なので、まだシーズンは長い。早めに加入したほうがファンクラブはお得な機会が増える
- ファンクラブに入りたいと思ってもらえるような特別感のあるグッズが作れるとよいかもしれない
- ファンクラブであれば入会者は限られるから、仮にロットが小さくても「どうせもらえない」とは感じにくいはず
- よし、1,000個程度でインパクトが出せる商品を作ろう。予算ないけど…
- あと、条件としては既存のグッズの売上の邪魔をしないこと。既に存在するグッズに似すぎるとカニバリゼーションが起きてしまい、無料が勝ってしまう
こんな感じで考えた末に、見つけたのが今回の 120ml のステンレスボトルだった。
ミニボトルは近年のヒット商品の一つではあるが、120ml は実際に現物を見てみるとわかるが、自分で買うにはかなり勇気がいる極小サイズだ。本当に小さい。ミニボトルの生みの親の「ポケトル」のストーリーを読んだことがあるが、企画会議で猛反対にあったらしい。実物を見てみると反対する人の気持ちもわかる。それぐらい小さいのだ。
この感覚はおそらく多くの人も同じで、流行ってはいるが「もう持ってます」という人は実はまだ少ない。ミニボトルを買ったことがある人の多くは 160〜200ml あたりのサイズを選ぶことが多いのではないだろうか。(それでもじゅうぶん小さいけど)
120ml は極小サイズなので、同じ商品カテゴリーであっても他のボトルと用途がかぶりにくい。むしろサイズの小ささによって使い勝手はより広がる。ランチバッグどころかポケットにもすっぽり入るし、観戦時のみならず、オフィスやちょっとした散歩などでも使えてしまう。ステンレスボトルはコールド・ホット両方に対応しているので、デザイン性をなるべく上げれば(≒主張しすぎないものにすれば)利用シーンや利用時期は広がり、年間の使用回数が増えていくことが期待できる。
「欲しいけど買うまでには至らなかったアイテム」と「普段使いしても違和感のないデザイン」が掛け合わされれば、リピーターのみなさんに「ファンクラブに入っていてよかった!」と思ってもらえるかもしれない。あわよくばノベルティがフックになってファンクラブに入会してみようという流れも期待できるのではないか。
その企みが成功したかどうかを確かめることは残念ながらできないのだが(クラブに感触だけでも聞いてみたい)、ありがたいことに当日用意した全数がすぐに捌けたということだったので、リピーターのみなさんのお手元に届けるという最低限の目的は達成できたと思う。受け取れなかった方がいたら申し訳ありません。
制作にあたっては、クラブにはコラボの了承だけでなく、「できればファンクラブ限定にしてほしい」というこちらからのリクエストも快諾してもらった。運営サイドのご理解に感謝している。
サッカークラブと地元
LIFT はツエーゲンの地元スポンサーなので、単にお金を出すということだけではなく、同じ石川県の法人として何らかのスポンサー的行為を示したいとつねづね考えている。
ツエーゲン金沢は、金沢という市の名前がついているが、石川県全域をホームタウンとするクラブだ。だから、間接的にではあるが、ツエーゲンの活躍はそのまま石川県を代表するクラブの活躍と考えていいと思う。
やり方と成績次第では、たとえば新潟や岡山のように、クラブの存在が誇りとなって地元の精神と経済を後押しするという流れがつくれるのではないだろうか。どちらもつい数年前までは共に J2 で戦っていたのだ。金沢(石川)にできないはずはない。
…などと考え出すとちょっと熱くなってしまうが、いずれにせよ地元に J クラブがあるのは基本的にとてもポジティブなことだと個人的には考えている。金沢は観光資源が豊富な街なのでその恩恵を感じにくいが、全国的には隔週で何万人も集めるコンテンツを持つ地方都市は少ない。でも J クラブを擁する街であれば常にその可能性があるのだ。実現するかしないかは(クラブの成り立ちや時の運にもよるけど)市民や地域財界の意思も強くかかわってくるだろう。
余談だが、当日の MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)賞には、同じ野町地区の仲間である四十萬谷本舗さんにご協力いただき、発酵食品の特別セットを作っていただく予定だった。

発酵食品は石川の代表的な食文化の一つで、選手の健康にもいいはず。食材には能登の自然の恵みも含まれる。残念ながら試合には敗れてしまったので賞品として渡すことができなかったが、代わりにクラブのみなさんにご賞味いただく予定だ。
こういう風に「地元である意味」をちょっとづつ活動にブレンドしていくことで、ゆっくりと「おらが街のチーム」になっていくのだと信じてこれからも支援していきたい。
というわけで、長くなりましたが、LIFT にとっても大きなチャレンジだったホーム開幕戦の冠試合(の主にノベルティ)について書いてみました。
決まってからすべてが慌ただしかったけど、楽しかったです。勝ちたかった!