2022年9月〜 ブックオフ徒然草 

突然だが、私はブックオフが大好きだ。

老舗の古書店や中古レコード屋では ”掘り出す” ものが、ブックオフだと ”救い出す” 対象になる。

これは、「そこに在ってほしくないものがそこに在ることを望む」というアンビバレントな感情が引き起こす錯覚のようなものである。錯覚に抗うのは難しいので、お姫さまを救い出す勇者のごとく、私は店内をぐるぐると歩き回るのである。

先日は年に1度の「ブックオフ籠もり」の日だった。私はブックオフが好きすぎて株主になってしまったので、忘れた頃に優待券(クーポン)が届く。そのクーポンを使って不要になった本を割増価格で引き取ってもらい、心ゆくままご利用クーポン上限額の少し上を目指して店内を物色するのである。

ひととおり人文書や専門書を見回ったところで、CDコーナーに向かう。車に常備するCDを入れ替えるのにブックオフ籠もりは最良の機会の一つだからだ。

快適なドライブの半分は音楽でできていると思う。それには、CDを選び変えるという、助手席が即席ディスクジョッキーとなる行為も含まれている。

今どきCDなんてと嘲笑う向きもあろうが、Bluetoothでつなぐスマートフォンは非常に個人的なデバイスなので、家族で運転中に仕事の電話がかかってきては困るし、「あ、一周したね。変える? 次は何にしようかー」といった車中のコミュニケーションも生まれにくい。この点だけをとっても、CDの優位性は高いと思う。

車で流す音楽は、自分が納得できるギリギリの範囲で、大衆的であるべきだというのが持論だ。それは、SpotifyではなくCDで貫いている理由とも共通する。選ぶという行為が発生する以上、自分以外も選べないといけないからだ。マニアックなリストは、自宅の本棚に限定すべきだというのが個人的な考えだ。

一方で、落とし穴もある。ドライビングミュージックといえばシュガー・ベイブや山下達郎だろうと考え車にベスト盤を搭載していた頃もあったが、ヤマタツ先生の声はα波が出過ぎているので運転中にすぐに眠くなる。AORやシティ・ポップはドライブ向きな曲が多いが、そういった副作用があることはゆめゆめご留意されたい。

ちなみに先日はサチモスを購入した。都会的かつマッシュアップされたローファイなサウンドはドライブ向きだし、数年前にめちゃくちゃ売れたのでブックオフでは在庫過多になって安いコーナーに置いてあるのだ。「SEAWEED」という曲で「干からびてー」と歌う箇所で後部座席の子どもたちがなぜか爆笑して車中が盛り上がるのもポイントが高い。

余談だが、快適なドライブのもう半分は「助手席力」でできていると思う。

CDを選ぶという行為だけではなく、遠出する前に渋滞アプリを前もって立ち上げてくれたり、後部座席から「まだ着かないのー?」とクレームが上がればクイズ大会が始まり、ウィンカーを出さずに割り込んでくる車があれば一緒になって悪態をつく、そういう共感と対応力の高さが、「助手席力」だと個人的に定義している。私も仕事でクライアントに対して高い助手席力を発揮していきたいものだ。

話が逸れてしまった。とにかく、私はブックオフが大好きだ。