弊社のある石川県は日本海側なので、冬はしっかりと雪が降ります。
雪が降るので冬季の日課には「雪かき」が加わるのですが、これが生まれてから40年以上関東平野から出たことがなかった私にはとてもおもしろく感じました。まともにやったことないですからね。
おもしろいので、雪が降った日には子どものようにウキウキと自宅周辺の雪かきをしています。
(一方で、雪かきを親の仇のように憎む方が多いのも事実で、経験や認識による個人差が大きいのだなと感じています)
年をとると代謝が落ちるので、健康維持のため適度な運動は欠かせません。ある程度余裕があればジムなどに通うのが年相応の対処かなと思うのですが、私はこれがめっぽう苦手で、これまで幾度となくトライしては、会費をドブに捨ててきました。
さすがに40代に入って自分というものが少しづつ分かるようになり、苦手なものはやめようということでジム通いという選択肢は頭から外すようになったのですが、それでも何か運動しないとワガママなボディのおっさんが出来上がるだけです。
じゃあどうすれば…と考えていた私にとって、雪かきは天啓といいますか「これなら続くぞ!」という運動として現れました。
ところで、なぜジムは苦手で、雪かきはおもしろいのだろうか? 逆の人も多いというのに。
雪かきをたのしんでいる自分に、そんな疑問が出てきました。この疑問を自分なりに言語化しておきたいと思い、このあいだ少し考えてみました。
シーシュポスの岩っぽいのが苦手
シーシュポスの岩というのはこういう説話です↓
神を欺いたことで、シーシュポスは神々の怒りを買ってしまい、大きな岩を山頂に押して運ぶという罰を受けた。彼は神々の言い付け通りに岩を運ぶのだが、山頂に運び終えたその瞬間に岩は転がり落ちてしまう。同じ動作を何度繰り返しても、結局は同じ結果にしかならないのだった。
Wikipedia 「シーシュポスの神話」より
私は極度に言動の意味づけを好むタイプなので(=意味づけにこだわったほうが無意味さの価値が増すと考えているので)、いわゆる不条理が苦手です。安部公房などは好んで読みますが、あれは読み物だからいいのです。
もとい、ジムにおける運動の意味は…と考えたときに、エクササイズの意味づけはすべて自分の身体に向かうことに気づきました。そのために行っているのだから当たり前なんですが、「アウトプットとアウトカムがすべて自分に向かうというのは、いったいどういうことなんだろう」と考えはじめると、何ともいえない気分になりました。
こういうことを書くと怒られそうですし、ジムに行く方を否定するつもりは毛頭ありません。フルマラソンに出場するとか、ボディビルディングの大会に出るとか、そういった意味づけがあればジムは素晴らしい方法だと思います。私はこれといった目的もなく、ただ自身の健康維持のためにジムに行くという行為に意味付けができないタイプの人間だということでした。(めんどうだ)
仕事量ゼロ感
学生時代に物理の授業で「仕事=力の大きさ×移動距離」だと習いました。
ランニングマシーンの上で脚を動かしていると、「こんなに苦しいのに仕事量、、、ゼロ?」と思ってしまうのです。これは試験でいつも赤点をとっていた私の物理学に対する無理解さのなせる勘違いだとは承知しているのですが、このカロリー(ジュールですね)が中空に消えていって何の役にも立っていないと感じるのは地味に苦しい経験でした。
走るたびにどうしても「これならメシ食わないほうがマシだ」と思ってしまうので、であれば街をジョギングしたい。ジョギングは仕事量が見える化できるのでジムよりは続きましたが、それでも根底に流れるシーシュポス感は完全には拭えず、ちょっと仕事が混んだり、雨が降ったりすると止まってしまいました。
そこで雪かきです。
雪かきには「雪がなくなる」という明示的なアウトプットがあります。そしてそのアウトプットは「歩きやすくなったり車で通ったりできるようになる」という、他者とも共有できる便益が生じるのです。アウトカムに社会性がある。
場合によっては感謝され、同じ目的を持つ人が集まると連帯感も生まれます。自分のエネルギーが自分だけに向かず、外側にも使われていく感覚は、言動にいちいち意味づけしたがる私には丁度いいバランスの運動でした。
雪かきは体力を使うので、気温が氷点下でも30分もやれば汗だくになります。おじさんになると実生活で汗だくになるなんてサウナくらいしかないですから、とても貴重な運動の機会です。
地味に戦略性もある
雪かきは単純作業に見えて地味に熟練度が求められる戦略性の高い運動なのもポイントが高いです。
まず、道具を状況ごとに使い分けます。雪かき用のスコップだけでも種類がいくつかあります。
ふつうのやつ
これはノーマルタイプ。一家に一本、どのご家庭にもあります。
金属タイプ
新雪だとノーマルタイプでいけますが、時間が経って氷と化した雪はプラスチックだと歯が立ちません。そこで古えの金属スコップが活躍します。これで氷を砕き、ノーマルタイプで掬っていくという連携プレイを多用します。
幅広タイプ
広範囲の新雪をやっつけたいときは、ノーマルタイプよりこちらのほうがオススメです。ブルトーザーの要領でガーッと雪を押していくと短時間でやっつけることができます。
地面が平らであるとか、降雪から時間が経っていないとか、いくつか利用条件はありますが、ハマると大活躍してくれます。柄が長いので腰を傷めにくいのもポイントです。
車載用
盲点なのが車載用です。これは知らないと用途を想像しにくいのですが、あるとないのとでは雲泥の差です。降雪時はちょっとした駐車が命取りになったりします。ガラスが凍ってワイパーが無効化されたり、天井の雪かきをしなかったせいでブレーキ踏んだ途端に雪が落ちてきて前が見えなくなったりと、車載用雪かきは一台に一本マストです。
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機械で解決
番外編ですが、機械のチカラでやっつけてしまうという方法もあります。駐車場をお持ちだったり、敷地が広いお家だと使っていらっしゃるケースをたまに見かけます。業務用を買うまでもないけど手動だとキリがない、という方は意外と多いので、一晩で数十センチ積もった、みたいな豪雪時には力を発揮してくれそうです。
他にも屋根雪用のロングタイプや、アルミの幅広などの複合タイプ、子ども用の小さいものなど、たくさんの種類が世の中には流通しています。これらの道具たちを状況に応じて使い分けていくのはなかなかに面白く、かかるコストと自宅の設置スペースとの相談も含め、アイテム選びから非常に戦略性にあふれた活動だなと感じています。
というわけで、雪かき自体はなかなかたいへんなのですが、ジムが続かない私にはちょうどいい運動で、今のところたのしみながら取り組んでいます。もっと歳を重ねるとまた違った感想になるのかもしれませんが、そのときはまたそのときに考えたいと思います。