『インテル戦略転換』 〜パラノイアだけが生き残る

私事ですが、2022年8月いっぱいで上場企業含めた数社の重責の任を降りたことで翌9月からのミーティングがそれまでの半分以下に減る、ということがありました。

それまでの「がああー、終わらん!」という日々から大胆な引き算を経て、日々の業務が夕方頃には終わっている。束の間の開放の時期がありました。

そうなると、根がワーカホリックな私は、仕事が【ちゃんと終わりすぎている】ことに不安を覚えます。

「久しぶりの凪の時間なんだからもう少し休めば…」と自分でも思いますし、妻にも「ちょっと旅行でも行ってきたら?」と気遣いをもらっていたのですが、私はロスジェネど真ん中の78年生まれですので、キャリアの大半が不安ドリブンで形成されています。「安心したらそこでキャリア終了だよ」という安西先生の言葉をリアルタイムでジャンプで読み(違)、少しサボれば「なぜオレはあんなムダな時間を…」という三井寿ばりの後悔を自身に投影してしまいがちな世代でもあります。いろいろと難癖つけて休もうとしない。休憩がヘタクソなんですね。

世代論はあまり得意ではありませんが、思春期を覆っていた時代のムードというのはそれなりにおじさんになっても影響力があるもので、三つ子の魂百まで、この種の不安とはおそらく一生をかけて付き合っていかないといけないのだろうなあ、と思っています。

さらに付け加えると、社会人3年目くらいに読んだ『インテル戦略転換』の読後感が強烈だった記憶が今でも残っているため、本気でアンディ・グローブのような偏執的なまでの心配性が最強だと思っているフシがあります。世界的に有名な経営者に自分の弱い部分を裏書きしてもらったような気分なんでしょう。
 
不安は、その輪郭が描けるようになれば比較的マネジャブル(Manageable)ですし、未来に対して多くの示唆を与えてくれる感情でもあります。要するにわからないことを目の前にすると人は不安になるわけで、生物として適切な感情のはずです。だから「Only the paranoid survive(心配性だけが生き残る)」なんだと思います。

ちなみに、本書で触れられている IIP(Intel Inside Program)は歴史に残るマーケティングプログラムの1つだと思いますし、本文で繰り返し説明される「垂直統合」「水平統合」は、当時20代の若造だった私に、バリューチェーンを俯瞰する視点をイヤでも授けてくれました。2017年に▶新訳が出ていますので、読み直してみようかな。