すべての広告プラットフォームで同じ縦横比の画像を使い回せればどんなに楽なことか…!と思っている人は多いはず。
でも現実は残念ながらそのようにつくられてはいない。視聴態度や表示画面の設計、そして何より異なる一人ひとりがそれぞれの興味関心でそのメディアに触れている以上、サイズも表現も違うのは当たり前のことだ。
一方で、広告を出稿する側からみれば、昨今はプラットフォームの数が多く配信面によって推奨されるサイズも異なる。そもそも配信面の種類が多いこともあり、しばしば我々は管理画面の前で混乱しがちだ。
InstagramとFacebookの広告配信面
ちなみに、代表的な SNS である Instagram と Facebook だけ取り出しても、広告が配信できる出面はこれだけある。
- Facebookフィード
- Facebookプロフィールフィード
- Instagramフィード
- Instagramプロフィールフィード
- Facebook Marketplace
- Facebook動画フィード
- Facebook右側広告枠
- Instagram発見タブ
- Instagram発見ホーム
- Messenger受信箱
- Facebookビジネス発見
- Instagramストーリーズ
- Facebookストーリーズ
- Messengerストーリーズ
- Instagramリール
- Facebookリール
- Facebookインストリーム動画
- Facebookリール広告
- Instagramリール動画の広告
- Facebook上の検索結果
- Instagram検索結果
- Messenger広告メッセージ
もちろん、これだけ増えてしまったそれぞれの配信面に合わせて画像やテキストを最適化するのは無理なのはプラットフォーム側もわかっている。だから Meta であれば Advantage+ でもなんでもやって自動化して楽になりなさい、というのが昨今の流れではある。
… ではあるものの、Advantage+ や Google の P-Max のように完全にブラックボックス化した自動キャンペーンには独特の行儀悪さがあるのもまた事実。このジレンマに悶えている広告主や広告代理店は多いだろう。
世は Walled Garden 全盛とはいえ、ここに壁の外側の配信である Audience Network やDisplay Network なんかを加えてしまうとサイズだけでなく審査面やブランドセーフティも含めて完全なカオスになってしまう。出面の状況はある程度コントロールしておきたいと考えるのが広告運用者の良心ではないだろうか。
広告運用において、良心と面倒はしばしばトレードオフの関係にある。広告に使う画像が one-size-fits-all ではない以上、出面を管理し、それごとに適した表現を模索するのはとてもたいへんだ。面倒くさいしヘルプを見てもよくわからない。
せめて最初につくる画像のサイズだけでも統一できないものか。
ここでは、誰もがそう考えていると思われる代表格の Instagram広告 と Facebook広告について、ざっくり画像サイズを備忘録がてら作ってみることにする。
※以降はざっくり備忘録なので詳細を知りたい方は公式ヘルプか詳細が書いてある他社さんの記事をご参照ください
Instagram広告の画像サイズ
まずは Instagram 広告から。Meta の管理画面には広告作成時に画像をトリミングしたり縦横比を揃えるツールが搭載されているのでだいぶ改善されてはいるはずなのだが、なぜか混乱してしまう。
おそらく、オーガニック投稿やページの各所で使う画像など、場所ごとにものすごくたくさんの推奨サイズがあるからだと思う。
なので結局いつも広告をつくるたびに毎回律儀に混乱してしまうのだが、広告だけで考えてみると実は意外とシンプルなことに気づく。
Instagram 広告の画像は、実は上記の 3つのサイズに集約されている。
Meta の広告フォーマットは大雑把に分けると「タイムライン(フィード面)」「インスタント(リールなど)」「その他(検索結果など)」の3種類に分類されるのだが、配信量のほとんどは「タイムライン(フィード面)」と「インスタント(リールなど)」で賄われている。
タイムラインの広告はすべて正方形(1080 x 1080 px)で済むし、ストーリーズやリールは縦型(1080×1920 px)が最適解。あとは一部に横長の画像がある程度だ。
画像ではなく動画であれば、ここに 4:5(1080×1350 px)のアスペクト比が加わるが、正方形でも配信自体は可能である。
カルーセル広告をつくる場合はすべての画像を同じサイズに保つ必要があるので、画像の縦横比がバラバラだと面倒くさい。カルーセルの最初の画像の縦横比が基準となって残りの画像はそれに引っ張られる仕様なので、油断すると画像の数だけトリミングが発生してしまう。
広告をつくる前の素材自体を最初から正方形(1080 x 1080 px)に統一してしまう下準備をすると、作成から配信までのオペレーションがシンプルになるはずだ。(し、広告表現を磨くという大事な作業に時間が使えると思います)
Facebook広告の画像サイズ
つづいて Facebook 広告。こちらも同じMeta なので Instagram 同様にたくさんのサイズが存在するが、煮詰めるともっとシンプルになる。
タイムライン型の広告はとにかく正方形(1080 x 1080 px)で作っておき、リールなどの動画は縦長のレイアウト(1080×1920 px)にしていけばOK。
Instagram と同様に Meta の管理画面には画像をトリミングしたり縦横比を揃えるツールがあるので、たとえば横長の画像を用意しておき、あとからトリミングで正方形に切り取るということもできるにはできる。
ただ、元が横長だとトリミングの際にレイアウトがほぼ間違いなく途中で見切れたりするので、そういった効果を狙っていない場合は編集の作業量を考えてもベースを正方形で作ってしまったほうが早い。写真は少し引きの画で撮りましょう。
その他のレギュレーションとまとめ
画像の入稿にはファイルサイズやファイルフォーマットの制約も存在している。
画像 | 動画 | |
---|---|---|
ファイルタイプ | Jpg、PNG | MP4、MOV、またはGIF |
ファイルサイズ | 30MB以内 | 250MB以内(リールは4GB) |
再生時間 | — | 60分以内(リールは15分) |
画像サイズや要件は、オーガニックも含めると MECE に網羅するのは至難の業である。生真面目に許容されている縦横比と解像度を洗い出し、各配信面に対応して一覧にしようとするとかなり冗長な表ができあがる。
おそらくだが、この生真面目さの産物である冗長さが、入稿のたびに迷ってしまう原因だと思う(私はそうです)。だからもう「Meta は正方形と縦長の2種類つくればだいたいいける」ということにしておきたい。しておきます。
言いたいことは以上なのですが、最後に古い話をして終わります。
サードパーティアドサーバー(3PAS)によるメディアの垣根を超えた広告運用は、はかなくも2010年代の理想で終わってしまった感がある。あれはトラッキングの側面が強く運用の概念が薄かったのである意味で仕方がないことではあったが、インターネットっぽくて嫌いではなかった。
そして現代は相互乗り入れではなく大手プラットフォームの専制政治の時代である。つまり互換性の低いメガプラットフォームによる群雄割拠はこれからもつづくわけで、おそらく巨大なガラパゴスがどんどん増えることになるだろう。
その場合、ワリを食うのは広告主や広告代理店である。管理するプラットフォームの数だけ構築と運用が発生する。運用そのものはどんどん AI によって手離れさせていく方向にありながら、広告出稿側が望む個別最適化や統合運用の手間はむしろ増えていく。
このバランスをとる役回りが、クリエイティブになるのではないか。表現はどんどん細分化していくが、サイズやアスペクト比は個別化するメリットが薄い(手間が増えるのでデメリットのほうが多い)。だからフォーマットはどんどんシンプルになっていくと予想できる。
画像や動画の仕様は網羅的に把握するほうが論理的にはもちろん正しい。だけど、やはり実利を考えるとざっくり把握しておくくらいがよいのかもしれないと思う。みなさんはいかがでしょう。