Google が 2024年の3月末に検索広告における「上位の広告」の定義を更新したと発表している。
広告のアカウントを持っていると、「重要なお知らせ: 検索広告における指標の定義の変更について」という題名のメールが届いているので気になった人も多いと思う。
メールには以下のようにある。(太字は筆者による)
検索広告における広告の配置が進化し続ける中、Google はお客様の商品やサービスに関心のあるユーザーと、お客様を結び付けることに注力しています。このたび、上位の広告に関する定義を更新します。上位の広告はオーガニック検索結果の上に表示されますが、特定の検索語句ではオーガニック検索結果の下に表示されることもあります。
Google Ads からのメールの抜粋
これは要するに、「”上位” という表現だけど、実際にはオーガニックの下に出ることもあるよ〜」ということを言いたいのだと思われる。ややこしそうなので詳細に見ていこう。
もともとの「上位の広告」の定義
以前の Google広告(=アドワーズ広告)はパソコンの画面で見る前提のレイアウトだったので、検索結果の上部だけでなく、右側にも広告枠があった。
スマートフォンの登場以降はモバイルファーストになり、右側にあった広告枠はなくなって、オーガニックの上部のみになった。
もちろん2ページ目以降にも広告は出るし、広告品質が一定の水準に満たない場合は最上位でもオーガニックの下に位置することがあるが、とにかくいつしか右側はなくなって現在のレイアウトになっている。
そして、管理画面から「平均掲載順位」の項目が撤廃されてからは、広告の掲載位置は「最上位」「上位」という、インプレッションシェアの項目の中で登場する区分になった。(無印の場合は上位ではないということになる)。
つまり「上位の広告」とは、基本的にはオーガニック検索結果の「上」に表示される広告のことを指していたのだ。(書いていて「当たり前やんけ」と思いますが…)
「上位の広告」のイメージ(これまで)
これからの「上位の広告」
今回の定義の変更で、今後はこれまでのようにオーガニック検索結果の「上」に表示される広告のことだとは限らなくなる。
「上位の広告はオーガニック検索結果の上に表示されますが、特定の検索語句ではオーガニック検索結果の下に表示されることもあります。」と表現されていたとおり、特定のクエリではオーガニックの下に広告が表示されることになるらしい。
もちろん、これまでもオーガニックの結果の下に広告が表示されることはあった(広告の品質が低いと「1位であるにもかかわらずオーガニックの下になる」ということもあった)が、それは10件のオーガニック検索結果というひとかたまりが終わったあとに、その下に広告ブロックとして出現していたものだった。
今回の更新によって、今後は「上位の広告」であっても、オーガニックの検索結果の下に表示されることがある。それは10件ひとかたまりのオーガニックリストの下に位置するのではなく、オーガニックとオーガニックのあいだにリストされることを指すことになる。
内容が更新された「上位の広告」のヘルプページには、以下のように説明されている(太字は筆者による)。
上位の広告は、上位のオーガニック検索結果の横に表示されます。通常、上位の広告は上位のオーガニック検索結果の上に表示されますが、特定の検索語句では上位のオーガニック検索結果の下に表示されることもあります。上位の広告の配置は動的になるため、検索内容に応じて配置が変わることがあります。
上位の広告 – Google 広告 ヘルプ
冒頭に「検索結果の横」という表現があるが、おそらく「隣接」の誤訳だと思われる。原文は「Top ads are adjacent to the top organic search results.」
2023年の10月なので少し前になるが、以下のようなテストが行われていたという報告も SNS で挙がっており、ここでもオーガニックとオーガニックのあいだに表示されていた(このポストでは「3番目や5番目に出てきた」とある)
Did I miss a memo and there are now ads mixed in with the organic results, or is this a test?
— Patrick Stox (@patrickstox) October 24, 2023
Just went through a couple queries that had ads where the 5th and 3rd organic positions normally are. Example screenshot. pic.twitter.com/YergCg6ekM
なお、このテストでは3番目や5番目という微妙な位置だったが、今回の定義を原文の英語で読んでみると
「Top ads are adjacent to the top organic search results. Top ads are generally above the top organic results, although top ads may show below the top organic results on certain queries.
(上位の広告はオーガニックの上位の検索結果に隣接して表示されます。上位の広告は通常、オーガニック検索結果より上に表示されますが、クエリによってはオーガニック検索結果より下に表示されることもあります。)※筆者による意訳
Top ads – Google Ads Help
と書いてあることから察するに、どのあたりを「オーガニックの上位」とするかで印象は変わりそうだ。(ちなみに筆者の環境でいろいろ検索してみたところ、4−5位が広告だったケースは確認できたので、やっぱり5位くらいまでなんでしょうか)
「上位の広告」のイメージ(これから)
影響はあるのか
すでに検索結果には広告とオーガニックが順不同に入り混じっている。これはどういった影響があるのだろうか、最後にちょっと考えてみたい。
Google の検索結果は、以前は広告とオーガニックの境界線が明確に表現されていた。明示的に広告だとわかる右側広告がなくなって縦のラインに吸収されたあとも、背景色が若干違っていたり、広告と分かるように色違いのアイコンが表示されていたりした。
2024年の現在では、「スポンサー」という小さな表記がある以外には、オーガニックと広告の区別はほとんどなくなってきている。
広告とオーガニックの見た目上の違いがほとんどなくなるにつれ、広告の平均CTR は上昇傾向にある。
特定の結果を定点観測していないのであくまで体感値でしかないが、以前は平均CTR が15〜20%近くあるのは「指名検索」というのが相場だったが、現在では指名検索ではないジャンルのキーワードでもそれほど珍しい CTR ではなくなった。「広告は以前よりもクリックされている」という数値的な実感がある。
これは内部的なアルゴリズムの賜物もありながら、インターフェースの変化による影響も大きいのではないだろうか。
視点を少し変えてみれば、オーガニックと誤認できるほど表現を揃えないかぎり、今回のような広告とオーガニックの順位を動的に入れ替えるようなハイブリッドな検索結果はつくれない。途中で色が変わったりしていたら不自然ですもんね。
位置や表現による明示的な判別基準がなくなることで、今後はますます広告とオーガニックの垣根がなくなっていくだろう。Google は裏側でページ全体の CTR を見て検索結果における広告ランクの下限値を動的に変更しているはずので、広告の位置をダイナミックに調整できる仕様自体は、検索結果の質的な平準化に寄与しそうな気はする。
一方で、広告の順位は「クリック単価×広告品質」というかけ算でランク化されている以上、広告の品質はシンプルなオーガニックの結果としての品質とは別の判断基準が働いてしかるべきだろう。そもそも両者は違うものなのだ。これまで20年以上にわたって続いてきた掲載位置による区別は、その論理的な表明だったように思う。
広告とオーガニックに一定の線引きをしてきた検索結果は徐々に失われ、今後はほぼ完全になくなるだろう。CTR は上がっているかもしれないが、考えるほどモヤモヤも増えていく。(少なくとも私はモヤモヤしている)
この感情はそのうち風化し、モヤモヤはそのうち雲散霧消するかもしれないので、こうやって書き留めておくことにします。