社会貢献:クリーンオーシャンアンサンブル
Case: Clean Ocean Ensemble
海洋ごみ問題の解決に向けて
香川県の小豆島を拠点とする Clean Ocean Ensemble(クリーンオーシャンアンサンブル)は、分野の垣根を越えて様々なステークホルダーと協働しながら、海洋ごみ問題の解決に向けて活動しているNPO法人です。
LIFTは、ソーシャルアクションの一環として、2023年よりクリーンオーシャンアンサンブルの法人パートナーとして支援を行っています。
今回は、クリーンオーシャンアンサンブル代表理事の江川さまをお招きし、本事業の立ち上げに至った経緯、海洋ごみという構造的な社会課題への取り組みについて伺いました。
特定非営利活動法人 クリーンオーシャンアンサンブル
代表理事 江川裕基 さま
インタビュアー
LIFT合同会社
代表 岡田吉弘
誰もやらないなら自分がやってみよう
岡田:本日はお時間いただきありがとうございます。海洋ごみ問題は近年の報道で関心が高まってきた分野の一つだと思いますが、私のようにぼんやりとした理解の人も多いと思います。まずは江川さんの自己紹介と合わせて、海洋ごみ問題についてかんたんにお話しいただけますでしょうか。
江川:こちらこそお時間いただきありがとうございます。クリーンオーシャンアンサンブル(以下:クリアン)代表理事の江川と申します。クリアンは海洋ごみ問題解決のために海洋ごみの回収装置の開発、調査や記録、ごみのアップサイクルやリサイクル、発信や啓蒙などの総合的な取り組みを行っているNPO法人です。
海洋ごみ問題は、ここ数年急に問題となったわけではなく、プラスチックが生産され始めた頃から示唆されてきた歴史のある問題です。海洋ごみ問題のもっとも大きな影響は、漁業・海運・エネルギーなど、今まで我々が海から得られていた恩恵が、 ごみによる汚染が進むことで得られなくなってしまうことです。
大きく3つに分類すると、「経済損失」「生物被害」「人間への健康被害」。これらが直接人類に影響を及ぼす部分になると考えています。
岡田:なるほど。そういった影響に対して、様々な対策が議論され、実施されていると思うのですが、クリアンでは具体的にどういったアプローチをされているのでしょうか。
江川:この課題解決には、「海洋ごみの回収量を増やす」「ごみの発生自体を抑制する」「回収された海洋ごみの再利用を増やす」の3つが大きなポイントになると考えていまして、その中で私たちはまず最初の「海洋ごみの回収量を増やす」という部分に着目して取り組んでいます。
例えば、世界の年間プラスチック総生産量はおよそ4億トンと言われています。その中の170万トン(約0.4%)〜800万トン以上の海洋ごみが流れ出てしまっているのが現状です。日本においても年間プラスチック総生産量は約1000万トンと推計され、その中の約2万トン(約0.2%)〜6万トンが流出している現状があります。この流出はポイ捨てや不法投棄だけではなく、カラス等動物が荒らしたり雨風で流されたり・ごみ収集・運搬時に漏れてしまったものなどもあり、故意的ではなく社会システム的にどうしても流出してしまうものになります。
世間ではごみを減らそうという流れがありますが、世界の流れは逆行していまして、経済成長とともに2040年には年間プラスチック総生産量が倍になるという試算も出ています。環境問題は経済問題とのトレードオフの関係にあります。
仮に総生産量を極限まで減らしたとしても、経済的に代替不可プラの使用はなくならないため、社会システム上どうしても流出してしまう約0.2%が発生します。これをなんとか持続的に回収できるようにならない限りこの問題は解決しないと思っていまして、そのためにまずは「いかに持続的に効率よく回収するか」、その仕組みを作るべきだと考えるようになりました。
岡田:ごみは出さないのが理想だけど、理想論で物事は解決しない。だからまずは回収の仕組みをつくることで経済や生態系にダメージを与えずに持続的にしていくということですね。
江川:はい。ただ実は、海洋ごみの効率的な回収は非常に難しいと言われています。だからこそ、これまでほとんど誰もやってこなかったし、半ば諦められていたんです。
でも、私は「本当にできないのだろうか?」を検証してみたかったんですよね。ごみの量に対して、回収の活動量の少なさが大きな問題だと思っていまして。だからまずはやってみようと。単純にごみを回収するだけではなく、この活動が持続できるよう仕組み化もしていかないといけないので、NPOとして、ITを活用して回収量が客観的に証明できるようなシステムを作ろうと取り組んでいます。
頑張っている姿を見せることが、 人の感情を動かす
岡田:ありがとうございます。そもそもなのですが、江川さんはなぜ海洋ごみの問題に関心を持ち、クリアンを立ち上げようと思ったんですか?
江川:きっかけは大学生時代です。その頃、海外でバックパッカーとヒッチハイカーをしていました。パッケージの旅行ではなく、自分の旅を自分で作ることにロマンを感じていて、誰も自分のことを知らない環境に降り立った時に、自分は何を感じてどんなふうになるんだろう?ということに興味を持っていた時期でした。旅先では、コインで行き先を決めるようなこともやっていました。
そんな旅の中で、街中の至るところに落ちているごみのことがずっと気になっていました。「他国だから仕方ないのか」と思いながらも、どこか胸にひっかかっていたんです。
日本に帰ってきてからは、東京のIT企業で1年間ほど働きました。営業職だったので売上という明確な指標がありましたが、そこに対しては気持ちがまったく上がらないことに気がつきました。「今月のノルマを達成すれば〇期連続」だとか、周りから「高級車が買えるんだぞ」「良いマンションに住めるんだよ」と言われても、全然やる気が湧きませんでした。その時に、私にはこの生き方は違うんだなと、なんとなく悟りました。
岡田:私もそういうのはあまり得意ではないので何となく共感します。
江川:「このままじゃダメだ!」と思いまして、もう一度外の世界を経験したいと考えているうちに、青年海外協力隊にたどり着きました。 環境的なことには興味があったので、関連資格を取るなどの準備をして応募し、ありがたいことに合格しました。
そこから、アフリカのブルキナファソという場所への派遣を提案されました。「健康そうだから」というのが理由だったらしいのですが(笑)、ブルキナファソを調べてみたら、当時、世界でもっとも厳しいと言われる過酷な環境でした。当時の私はまさにそのような過酷さを求めていたので、二つ返事で行くことを決めました。
それで現地に着いたら本当に何もなくて。今まで訪れた中でも圧倒的な発展途上国でした。例えるなら『三匹の子ぶた』に出てくるオオカミに壊されてしまいそうな家ばかりで、水道も通っていない。そういった景色が広がっていたのです。
岡田:それだと、環境問題どころの話ではない。
江川:そうです。そんな原始的な環境の中に突如としてプラスチックが入り込んできても、その処理が追いついているわけがないという状態でした。彼らに対していきなり「ごみはごみ箱に捨ててください」みたいな啓発をしたところで、処分する施設も場所もないから、みんな家の前で野焼きして終わりなんですよ。市役所ですらそうでした。
最終的な処分場を作らないことには、ごみを分別したところで意味がないし、啓発したところで意味がない。インフラが大事なんだと気付きました。啓発やソフトの教育をする上では、それらを活かせるシステムがないと意味がないんだと。
そこで、処分場を作るための挑戦を始めました。
岡田:えっ!?
江川:もちろん一個人ができることには限界がありますので、市役所や環境省に声をかけ「この町には処分場が必要なんです!」と訴えかけました。ですが、全然動かないわけですよ。これまでなかったものなので誰もイメージが湧いてないんですよね。
どうすべきか悩んだ末に、「自分で穴を掘ってプレゼンしよう」と考えました。仲間を集め、スコップとツルハシで穴を掘りました。そこに偉い方々をお呼びして、改めて訴えたところ、「お前がやりたかったのはこれのことか」と、ようやく自分たちのイメージが相手に伝わりました。 炎天下の中での作業でもあったので、頑張っている姿を見せることは、人の感情を動かし物事を動かすファクターになりうるんだという気付きも得ることができました。
岡田:すごいな。じゃあ処分場は実際にできたんですね。
江川:プロジェクトとしては進行したんですが、最終的には止まってしまいました。プレゼンの時点で2年ある任期のうち1年半が経っていました。ごみだけでなく学校や教育の活動なども並行して進めていたので、進行スピードが遅かったんですよね。処分場の予定地で違法に農業をやっている人から「絶対に立ち退かない」と反対にあったこともあり、、、
岡田:そうだったんですね。その後、江川さんはどうされたんですか?
江川:その後はコンゴの大使館で働きました。ただ、この時期は新型コロナウイルスによる影響で退避命令が出てしまい、道半ばの悔しい思いのまま日本に帰りました。
望まない帰国ではあったものの、それをきっかけに、改めて本当に自分がやりたいことは何なのか、もう一度向き直る時間を作ることができました。そこで出てきたのは、やはり「ごみ問題」でした。
アフリカに居る頃から、放置された陸のごみが海に流れていることや、それが結局海岸に戻り、また同じように放置ごみとなっていることは知っていました。そして、The Ocean Cleanup というオランダの団体が海からプラスチックごみを取り除く活動をしており、そこに日本もお金を出していることも。
海洋ごみ問題はある意味で大きな産業になっており、海洋国家である日本は、何もしなければどんどん税金のようにお金を払い続ける仕組みになってしまうのではないかと思いました。外国に流れている資金を日本で回し、日本式ソリューションを成長させ、逆に海外に輸出し、世界の海洋ごみ問題を解決していく姿こそ、海洋国家でありリサイクル技術トップクラスの日本が目指すべきところだと思っています。
海洋ごみ装置の開発へ
岡田:そこでクリアンの立ち上げに至るわけですね。
江川:最初は「日本で同じような組織はないかな?」と調べたのですがどうやらいない。じゃあ、できるか分からないけれど自分でやってみよう!と決意しました。青年海外協力隊で出会った環境に携わってきた人たちを集め、立ち上げたのがクリーンオーシャンアンサンブルです。
岡田:アフリカで感じられたように、啓発よりも先に仕組みを作る、ということですね。
江川:はい、The Ocean Cleanup のように一目で分かるようなすごい活動こそ、人の心を動かすことができる。危機感を煽るような啓発よりも具体的で大きな成果を見せたほうが人の心に刺さるんじゃないかと。そう考えました。海洋ごみ問題は宇宙開発のようにロマンのある分野だと思うので、ここで新しい技術を駆使して海洋ごみ問題への注目度を高めたいと。
岡田:なるほど。江川さんのご経験が巡り巡って現在のクリアンの礎になっているということですね。現在クリアンでは効率的に多くの海洋ごみを回収できるような技術と、回収の定量化と見える化・回収時点のデータを集めるMAPを開発されているかと思います。改めてその具体的な活動内容や、現状を教えていただけますか。
江川:はい。少し長くなりますが過去から少し遡ってお話しさせていただきますと、私たちは2020年6月に任意団体を設立し、同年7月に香川県の小豆島を拠点に活動を始めました。12月にはNPO法人を立ち上げているんですが、実は最初の2年間は兼業しながら団体の基盤を整えることから始めました。パトロンなどいないので、団体の支出が必要になったら私がポケットマネーでやりくりするみたいなことをやっていました。誰かの指示を聞く必要もなく自分達が必要だと思う活動の構築に集中できましたが、資金繰りはいつも厳しかったので、私は毎日お昼はカレーの手弁当で節約していました。
しかも、NPO業務や起業経験はなかったので、全ての業務ができるようになるために団体に必要な業務は、未経験から学んで全部私ができるようにしてきました。立ち上げメンバーと協力しながら、ビーチクリーン・現場調査・講義・展示会に出展したりしながら、少しずつ法人に必要な会計・広報・人事・総務・資金調達といった事務方も整えていきました。
1年くらいは生活・活動できる資金を貯めたので、兼業を終え小豆島に移住したのが2022年の4月〜5月です。このタイミングで、ラッシュジャパンさんに資金援助をいただきまして、船や車、水中ドローンといった本格的な現場で活動ができるようなセットを整えることができました。寄付などで自分のお金だけではなく他人のお金を使う・本格的に人を巻き込むということを始めたので、受け取ったお金を全部活動と法人に注ぎ込むため、1年間無給でやりきろうと覚悟を決めました。1年で結果を残せなかったら、自分にはこの問題に立ち向かう資格はない・ソリューションを作る実力もないということで、諦めるために区切りを決め、背水の陣で移住しました。
海洋ごみの回収技術開発が始まったのは、2022年の7月です。The Ocean Cleanup と同様のインパクトのある活動を目指してはいたものの、海上の利用が想定よりも難しくて…。ごみ回収装置も、誰かがノウハウを持ってるわけではないので、自分1人でイメージから作り上げては、海上でトライアンドエラーを繰り返しました。船の運転も私が行うのですが、当然操縦技術なんてないのでうまくいきません。ですので、移住から約3ヶ月経った7月に地元の漁師さんにご協力いただくことで、ようやく海上での実証実験ができるようになりました。
この実証実験の開始は本当に嬉しかったです。任意団体設立から数えて2年のあいだ「お前はどうせできない」「無理だ」と否定的なことを言われ続けていたこともありまして…、心から嬉しく思った出来事ですね。
活動が本格化する頃にはクラウドファンディングにも取り組みました。それまでは漁協の組合長の船を貸してもらっていたりもしたんです。ただ、活動が軌道に乗ってきたことで、毎回借りるのも申し訳なくて…。ちゃんと自分たちの船を持たないと、と思い必死で動き回りました。クラファンは無事成功して我々の専用船、Clean Ocean Ensemble号を見つけ出すことができました。エンジンも故障だらけで修繕するところからスタートしましたが、今も現役でごみを取ることだけに特化した特殊な船として活躍してくれています。
岡田:実証実験開始後の2020年10月にはグッと回収量が上がっていますね。
江川:この頃には小豆島内でも協力者が増えてきて一緒に回収しようと共に取り組んで下さる人が増えたことで回収量が増加しました。この2022年は多方面に助けを求め、多方面から助けていただいた時期でもあります。恥ずかしながら組織が崩壊しかけていたタイミングでもあり、NEC社会起業塾などをはじめ、本当にいろんな方に力になっていただきました。
分別と記録。データで可視化する重要性
岡田:クリアンさんの活動を見ていると、「◯◯kg」「△△%」といった具体的な数字や、現在取り組まれている海洋ごみMAPなど、とにかくしっかりデータを出そうとされている姿勢が印象的です。
江川:はい、このような取り組みの発信をするには数値が大事になりますので、最初から具体的なデータにはこだわっています。
たとえば、我々は回収した海洋ごみも含め、ずっと分別にこだわってきました。これまで回収しているごみはすべて分別した上での計量を行っています。この作業は私を含む3名程度で行っていたのですが、2023年1月に分別型ビーチクリーンの活動を開始するのに合わせ一般公開することにしました。開催も毎月1回の頻度に変更し、イベントとして一般に公開し、現在も続けています。
そして2023年6月に、海洋ごみ回収装置の開発をようやく成功させることができました。それまでに3回失敗していますので、4号機になります。
岡田:私が初めて江川さんに話をお聞きしたのがこの頃です。確か5月だったのでまだ成功の前でした。「ここまではすべて失敗していて、現在4号機を制作中です」とまっすぐお話しされていたのを覚えています。
江川:あの時は平静を装っていましたが、資金的には一番厳しい時期でした(笑)。ギリギリのところでパタゴニアはじめいくつかの団体・企業さんに資金援助をいただきなんとか開発が継続できたことで現在に至っています。本当にたくさんの方にご支援いただきました。
岡田:素人が考えるだけでも、海洋ごみは海流や風向き、天候や地形などものすごくたくさんの変数がありそうで、装置の開発には困難を極めるだろうなと想像できます。
江川:まさに、今までは海に出てしまったごみはどうなるか分からないブラックボックスだと言われていまして、実現性を疑問視されてきました。メンタリングでお世話になっている方からも、「今のままでは難しいのでピボットしてはどうか?」など、方向の変更を促されることもありました。
でも、だからこそ先ほど申し上げたデータにこだわって仮説・検証を繰り返した結果、モーターなどの機器を使わず自然の力だけでの回収に成功できたんだと思います。しかも、流木などの自然物は再放流し、海洋ごみだけの回収を実現できた。個人的には、日本の海洋ごみ回収装置の第一歩であり誇るべきできごととなりました。
岡田:回収のデータがたまってくればインパクトも可視化できますね。
江川:データは本当に大事だと思っていまして、現在は香川大学の方にも協力してもらいながら、海洋ごみの流れ方や回収に何が相関してるといった海の傾向を掴むために、水温や海岸のデータも計測しています。その活動が2023年8月の瀬戸内海研究フォーラムで最優秀賞に選んでいただきまして、やはり社会の課題として求められていると同時に、そのことをしっかり可視化していく取り組みだからこそ評価いただけたのだと実感しました。
こういったデータをより広範につなげていくため、漁師さんにも協力いただきながら、どの季節であればどれぐらいのごみが回収できるのかなどが見える化できるよう海洋ごみMAPの作成も同時に進めています。
お金の流れをつくる
岡田:活動の幅が広がっていき、社会的なインパクトが以前よりも少しずつ見えるようになってきた一方で、新たな課題も出て来ているのではないかと思います。今後目指していきたい部分を教えていただいてもよろしいですか?
江川:我々のアプローチはあくまで数ある海洋ごみ回収方法の中の1つでしかないと思っていまして、全体としてごみの回収量が上がれば方法は何でもよいはずだと考えています。海上・海底にある海洋ごみの方が海岸よりも多いので、海上・海底にフォーカスするのは回収量を上げる1つのポイントになると思います。複数のアプローチで持続的に回収量を上げるにはどうすべきかというのが重要です。
一つは、香川県は漁師さんが普段の漁の最中に取れるごみの回収をしていますが、回収をお金にする流れを作るには、プラスアルファの付加価値が必要です。私たちは代理回収協賛+アップサイクル等の資源化+海洋調査で回収に付加価値をつけようとしています。
代理回収による海洋ごみオフセットの協賛プログラムを立ち上げて、ホテルのアメニティを取り扱う企業からのお声がかかりプロジェクトを進めています。世間にはSDGsに本気で取り組みたい企業さんが多く存在していて、使い捨てプラを使い経済を守りながらも海洋プラの海洋汚染改善に繋げようとしているのです。
我々は回収海洋ごみの定量化を進めているので、使い捨てプラ1個使用されたら海洋ごみが1個回収される流れを作ることに挑戦しています。使用される分だけ回収者に寄付され、海洋ごみがどんどん減る仕組みが作れればいいな、と思いこのプロジェクトを立ち上げました。
大量生産は負の一面もありますが、経済や便利性を確保してる面もあります。私は、全てやめれば最適化されるとは思っていません。ホテルのアメニティには利便性があり、顧客満足度を上げる要因の一つになっていると思います。だからなくすのではなく、今まで全く関係なかった企業さんを巻き込みながら、仕組みがワークしていくと自然と海洋ごみが回収されていくようなプラットホームを作ろうと考えています。
こういった活動が広がってくると、海洋ごみをちゃんとデータ化して回収すれば仕事になるというエコシステムも作れると思っています。仕事になれば持続可能性が上がります。
他にも、海洋ごみのリサイクル・アップサイクルを行っている企業・団体と連携を開始し、輸送コストを下げるために倉庫整備も終えました。分別回収をすることで再利用・再資源化の流れを作ることができることを証明しつつあります。ここはトータルで見たら赤字でしかないですが、最終処分場と自治体の負担を減らすことで行政に過度に頼らずに持続的に海洋ごみが回収できる仕組みの構築ができると考えています。
海洋ごみ問題の解決に向けて
岡田:本当にあらゆる方面に活動されていることが理解できました。ありがとうございます。最後に組織としてのクリアンのお話を聴きたいのですが、活動の幅が広がりステークホルダーがどんどん増えていくことで、運営も複雑さを増してくると思うのですが、そのあたりはいかがですか?
江川:正直に申し上げると、さまざまなものが足りません。活動に比例して業務は増えてきますので、総務や会計などのバックオフィスは慢性的に困っています。同時に資金的にもカツカツなので支援者や寄付を募ろうにもマンパワーが足りないと時間が割けない、、、というスパイラルです。
岡田:なるほど。やはり組織基盤作りは重要な要素ですよね。仕組みが整い、寄付管理も含めてできるようになるとクリアンはもっと強くなりますね。
江川:LIFTさんにはスポンサーとして支援いただいているだけでなく、寄付を募るための Google Ad Grants の設定なども手伝っていただき、とてもありがたく思っています。実際、岡田さんに手を加えていただいてからトラフィックが10倍に伸びました。以前よりも注目度が少しづつ上がっているように感じています。
岡田:弊社でできる支援は微々たるものですが、私は江川さんと何回かお話しさせていただいたことで、以前よりも海洋ごみに対する解像度が上がってきました。私と同じように、関心はありつつもどうしたらいいか分からないという方は、おそらく他にもたくさんいらっしゃると思います。そういった方に届けばいいなと。
江川:ありがとうございます。LIFTさんのような初期のサポーターさんには頭が上がりません。実績がまだ無いに等しい我々を信じてくれたというか。何かリターンがあるわけじゃないのに支えて下さった方々には、いつか恩返ししたいと思っています。今の段階では、この海洋ごみ問題に対する希望を示すことが1番のリターンだと思いますので引き続き頑張っていきたいです。
岡田:LIFTは小さな会社ですし、できることはたかがしれています。ただ、クライアントさんを支援することでできた僅かばかりの利益や少しのナレッジを、より大きなかたちで社会に還元してくれる団体に託したいと考えた先の一つがクリアンなのかなと思います。
私はクリアンのホームページにLIFTのロゴが載ってるのを誇りにしたいと思っていますので、今後、江川さんのチームが海洋ごみ回収で社会的インパクトを出してくれれば嬉しいです。
江川:ありがとうございます。海は世界でつながっていますので、海洋ごみは世界の問題です。つまりある種のスケーラビリティがあると考えています。応用可能なソリューションを世界中に展開して、SDGs14「海の豊かさを守ろう」の日本の最低評価を最高評価に変えて日本のブルーエコノミーを守ることに貢献していきたいなと思っています。
岡田:LIFTもその大きな志をしっかり支援していきたいと思います。本日は貴重なお話ありがとうございました!
NPO法人 クリーンオーシャンアンサンブル
https://cleanoceanensemble.com/