ツエーゲン金沢 廣井さま、辻尾さまインタビュー(2023年)

ツエーゲン金沢は、金沢市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町を中心とする石川県全域をホームタウンとする日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブです。スタジアムがある金沢周辺だけではなく、能登から加賀まで、地域社会と一体となったクラブづくりを行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及・振興、地域が抱える社会課題の解決にも取り組むホームタウン活動を継続的に実施されています。

LIFTは、ローカルサポート活動の一環として、2023年よりツエーゲン金沢のオフィシャルパートナーとなっているほか、サポーターとしてスタジアムでの観戦、ブラインドサッカーやアカデミーを支援する「挑戦の芽基金」やクラウドファンディングへの寄付等を行っています。

同クラブで2023年度よりクラブキャプテンを務められている廣井さま、クラブアンバサダーであり法人パートナー営業を担当されている辻尾さまをお招きし、お二人のクラブや地域への想いと役割についてお伺いしました。

ツエーゲン金沢 クラブキャプテン
廣井友信さま

ツエーゲン金沢 クラブアンバサダー
辻尾真二さま

インタビュアー
LIFT合同会社
代表 岡田吉弘

※このインタビューは2023年1月に行われました


なぜツエーゲンだったのか

岡田:本日はお時間いただきありがとうございます。ツエーゲン金沢(以下:ツエーゲン)の活動や意義についてお聞きするのにこれ以上ない完璧なキャスティングで逆に恐縮です(笑)。改めてお二人の自己紹介をいただけますでしょうか。

廣井:廣井と申します。私は2022年シーズンで現役を引退し、2023年シーズンからクラブのフロントスタッフとして働いています。2017年から6シーズン、チームのキャプテンとしてまとめ役を担ってきましたが、これからはクラブのまとめ役として「クラブキャプテン」という役職を拝命しました。現場とクラブのフロントスタッフ、パートナーの企業さまやサポーターのみなさんとの関係性をより良くするための活動を担う役割です。

辻尾:辻尾と申します。私は2018シーズンで現役を引退し、2019年からツエーゲンのクラブアンバサダーおよび法人営業を担当しています。ツエーゲンでは2014〜2016年までプレーしていました。

 

廣井友信 クラブキャプテン

岡田:ありがとうございます。辻尾さんが移籍された当時のカテゴリーは J3 でしたよね。昇格するぞ!という機運の中で移籍されてきた流れだったのでしょうか。

辻尾というよりは、行くところがなかった私を拾ってくれたクラブがツエーゲンでした。それまで清水エスパルス、サンフレッチェ広島、大分トリニータにいたのですが、最後の大分を契約満了になってしまいまして、要するにクビですね。クビにはなりましたが当時大分は J1 にいたので「自分は J1 リーガーだ」という自負もあり、どこかに移籍先はあるだろうとゆっくり構えていたんです。ただ、蓋を開けてみるとどこにも行くところがなくて。。。これからのキャリアをどうしようかと悩んでいたところ、ツエーゲンに拾ってもらったかたちです。

岡田そうだったんですね。清水エスパルスでは辻尾さんと廣井さんは一緒にプレーされていましたよね。

廣井清水より前、まだプロになる前の大学選抜で一緒にプレーをしていました。私が駒澤大学、辻尾が中央大学だったので、関東大学リーグですね。私がセンターバックで、辻尾は当時フォワードだったんです。

岡田辻尾さんその頃はフォワードだったんですね!知らなかった。センターバックとフォワードということはマッチアップしますね。

廣井そう、試合ではバチバチやってました(笑)。それから清水で一緒にプレーをして。3シーズンほど一緒でしたね。その後は、お互い違う道を進んだのですが、私が30歳の時にツエーゲンへ移籍したことで、また一緒のチームになりました。

岡田ご縁でいうとかなり長いですよね。大学の頃から知っていてプロでも同じチームでのプレーを経て、第二のキャリアでも同じクラブ。

廣井:不思議な縁だと思います。

 

辻尾真二 クラブアンバサダー

岡田廣井さんはご出身が東京、辻尾さんは大阪出身と、お二人とも北陸ではない土地のご出身ですよね。選手を引退される際にはさまざまな選択肢があったかと思うのですが、改めてどうして”金沢”、そしてツエーゲンを選択されたんでしょうか。

廣井:実際にいくつか選択肢がありました。ただ、金沢に8年ほど住む中で、元々歴史が好きということもあり、歴史や伝統が根付いているこの土地に魅力を感じていました。そして何より、クラブのために全力で戦ってきたという自負があって。これからは選手としてではない関わり方で、チーム・クラブに貢献をしながら、石川県のために働きたいという気持ちが大きかったです。家族ももちろんこの土地を気に入ってくれていて、家族が安心できるという材料もありました。

辻尾:私はツエーゲンのあとに移籍した SC相模原で現役を引退したのですが、その際に「金沢に戻ってきて、一緒に働いてくれないか」と GM から声をかけていただきまして。私自身、2014年に拾っていただいたご恩もありましたし、その3年間で J3 から J2 に昇格して、街が盛り上がっていく様子も肌で感じていました。私の時にはできなかった J1 に昇格させたい、選手とはまた違った立場でこの地域に、このクラブに恩返しをしたいと思い、戻ってきました。

岡田:ありがとうございます。お二人の、石川という土地やツエーゲンというクラブに対する想いが理解できました。

  

挑戦を、この街の伝統に。

岡田:ざっくりした質問になってしまうのですが、選手時代とは違ったお立場でクラブや石川県に関わるようになって、現状をどう感じていらっしゃるのかお伺いできますか?

辻尾:伸びしろと言いますか、完成しきっていない、まだまだどれだけでも大きくなれる余地を感じています。他の地域やビッグクラブでは必ずしもそう思えないかもしれませんが、この場所なら自分が貢献できることがあるんじゃないかと思えます。

廣井:私も似たような印象を持ってますね。自分がやればやるだけクラブが成長するはずだという感覚を持ってやっています。若い頃は自分個人ことだけを考えていたのが、ベテランになってチーム全体を俯瞰して見れるようになってきて、引退後はそれをクラブや地域に広げていくような感覚です。

 

挑戦を、この街の伝統に。

岡田:ありがとうございます。お二人とも「伸びしろ」という表現をしてくださいましたが、私は初めて西部緑地で観戦した時に「挑戦を、この街の伝統に。」というクラブの理念が描かれた大きな垂れ幕を見て、お二人がおっしゃっている「伸びしろ」を何となく感じたことを思い出しました。いい意味でこれからのクラブなんだなと。「伝統」という金沢に馴染みやすい語彙を使っているのに、すごく新鮮な響きがするというか、鋭いコピーだなと感じたことを思い出しました。

辻尾:どういうことですか?

岡田:クラブの理念は、一般企業だとビジョンあるいはミッションと呼ばれるものだと思います。それらは未来への約束なので、現在できていることや既に達成していることはあまり書かないはずです。そう考えると、あのコピーは「挑戦」というリスクを犯してチャレンジする文化がまだできていないからこそ、敢えて掲げた決意なのかなと感じたんです。

廣井:なるほど。

岡田:お二人のように、ツエーゲンを支える人たちがこの土地に可能性を感じているからこそ、このコピーなんだなと。先ほどお話しいただいたお二人のツエーゲンに関わるきっかけや、実際に働かれている手ごたえをお聞きして、勝手に合点がいきました(笑)。

廣井:今おっしゃった文化というキーワードでいうと、金沢や石川という土地には歴史や文化が根付いていますよね。私はそれにサッカーもメンバー入りさせたい。街にサッカーが自然と息づいていて、もちろん勝ち負けに一喜一憂するけど、あるのが当たり前の存在。地域の誇りになっていくのが目指す姿です。

辻尾:私はホームタウン活動やイベントで多くの方とお話しする機会があるのですが、たとえば選手やチームが子どもたちの憧れになったり、スタジアムに多くの方が来ていただいて試合観戦を楽しむようになるのが、サッカーの試合だけではない、クラブのあらゆる社会貢献活動の礎になると強く感じています。そのためにはシンプルに「強い」というのも大事になりますが(笑)。

岡田:クラブの持続的な発展は下の世代からですので、子どもたちに目指してもらえる存在にならないといけないですよね。「ツエーゲンはかっこいい!」「アカデミーに入りたい!」とこれからの世代に思ってもらえれば、石川県の中でいい選手が育って、チームが盛り上がり、いずれクラブや地域にも還元されていくという循環につながる。

廣井:まさにそうですね。人材という意味では、フロントも同じです。単純にリソースがまだまだ足りていない。一方で人を雇うにはお金がいります。そのお金を生み出すためには、フロントスタッフが多い方ができることが増える。そのスタッフを雇うには、、、というジレンマです。

仮にお金が生まれたとして、それはフロントを強化するために使うのか、チームに回すのか、チームが強いからお金が回るのか、回せるお金があるからチームが強くなるのか…。車の両輪ですが、どちらが先に起点になるのかはわかりません、辻尾がいうように、そもそもチームが強くないとお金が集まらない面もありますので難しいです。

辻尾:ファンやサポーターの方にもたくさんボランティアしていただいたり、地域の人たちに支えられているので、やっぱり期待に応えたい。リソースは限られているからこそ、みんなで盛り上げていきたいです。

廣井:今はもう選手としては活動していないので、私に何ができるかと言ったら、たくさんの人たちや企業のみなさんにツエーゲンを知っていただくこと、広報としてチラシ配りをしたり、メディアに出るなど、地道に泥臭くできることを一つひとつやっていくしかないと思っています。

 

ツエーゲン、石川県への想いを議論されるお二人

 

石川に根付いたクラブで、熱狂を

岡田:ありがとうございます。少し個人的な話で恐縮ですが、昨シーズン(2022年)、夏場に連敗が続いて厳しい時期があったじゃないですか。あの頃はホーム席で息子と一緒に応援することが多かったのですが、敗戦のあとの落ち込んだ空気の中でもサポーターから野次が飛んだりモノを投げたりするようなことが全くなくて驚きました。私は埼玉県の浦和にある高校の出なので、そうじゃない景色に慣れていたのもありまして、、、ちょっとしたカルチャーショックを受けました(笑)。

辻尾:(笑)

岡田:試合後に選手が挨拶に来る前にコールリーダーがサポーターに向かって「みんなの気持ちは分かる。だけど、ここは愛のある叱咤激励をしよう!」と呼びかけていて、無性に感動しちゃったんですよね。誰かを応援するっていうことはまさにこういう姿勢のことを指すと思うし、大人たちが模範的な姿勢を示してくれているので、ここなら安心して子どもたちを連れていける。いつかツエーゲンが上のカテゴリに行ったとしても、そのまま一緒に持っていきたい文化だなと思いました。

辻尾:ありがたいですね。サッカーは一つの試合でみんなで喜びを分かち合ったり、時には悲しんだり。暮らしを豊かにするコンテンツだと思います。2022年は日本の活躍でワールドカップは盛り上がりましたが、それ以上の熱狂が石川県に生まれると信じていますし、新しいスタジアムでそれをファン・サポーターの皆さんと起こしていきたいです。

廣井:同じく、近い将来、新スタジアムを満員にして熱狂を生みたい。老若男女、多くの人たちがツエーゲンについて、サッカーについて一緒に語り喜び合うというのを実現させたいと思っています。

岡田:お二人の、そしてクラブの挑戦を通じて金沢・石川が注目されるようになっていくのはとても嬉しいことです。弊社も一人のサポーターとして、そして微力ではありますがパートナーの一社として応援し続けていきたいと改めて思いました。本日は貴重なお話ありがとうございました!

 

2023年シーズンのスローガンは「最高!」

年度別の記事はこちらから