ツエーゲン金沢 廣井さま、辻尾さまインタビュー(2024年)

ツエーゲン金沢は、金沢市、野々市市、かほく市、津幡町、内灘町を中心とする石川県全域をホームタウンとする日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブです。スタジアムがある金沢周辺だけではなく、能登から加賀まで、地域社会と一体となったクラブづくりを行い、サッカーをはじめとするスポーツの普及・振興、地域が抱える社会課題の解決にも取り組むホームタウン活動を継続的に実施されています。

LIFTは、ローカルサポート活動の一環としてツエーゲン金沢のオフィシャルパートナーとなっているほか、サポーターとしてスタジアムでの観戦、ブラインドサッカーやアカデミーを支援する「挑戦の芽基金」への寄付等を行っています。

同クラブでクラブキャプテンを務められている廣井さま、クラブアンバサダーであり法人パートナー営業を担当されている辻尾さまをお招きし、復興に向けて歩んでいくこれからの石川県・能登地方とスポーツができる社会貢献についてお話をお伺いしました。

ツエーゲン金沢 クラブキャプテン
廣井友信さま

ツエーゲン金沢 クラブアンバサダー
辻尾真二さま

インタビュアー
LIFT合同会社
代表 岡田吉弘

※このインタビューは2024年1月に行われました


昨年を振り返って

岡田:今年もお時間をいただきありがとうございます。昨年のインタビューでは廣井さんが引退後新たにクラブキャプテンとしてスタートされたばかりのタイミングでした。2023年はどんな年だったでしょうか。

廣井:今までは選手という立場でクラブを見てきましたが、昨年からクラブのスタッフになり、さまざまな部署や関係者とお仕事をさせていただきました。物事を一つ進めるにも、たくさんの関係先がいて、それぞれが連携しながらプロジェクトを進めていく。自分がプレーしていた環境はこんなにも多くのことで支えられていたのかと気づきました。

選手のときは、究極を言えば「自分がやるかやらないか」だけでした。やればやっただけ結果がついてきますし、それによってお金も稼げます。でも、ボールを蹴るという仕事から離れてみると、一人で勝手にやるものはほとんどありません。新しい環境のおかげでたくさんのことを触れ、成長できた 1年だったと感じます。

岡田:私が触れているメディアが偏っている可能性はありますが、毎週必ずどこかのメディアで廣井さんをお見掛けしたように思います(笑)。

廣井:選手時代よりも認知という意味では広がったかもしれませんね(笑)。ツエーゲンのサポーターではなくても、お子さんたちと会う機会があると「見たことある!」と言われたりしました。

岡田:新しいお仕事の初年度、充実されていたのではないかと思います。

廣井:そうですね。結果としては J3 へ降格するシーズンになってしまい、自分の力不足や無力さを痛感する部分もありました。でも、そういった悔しい経験も含めて楽しめたかなと言えると思います。

岡田:ありがとうございます。辻尾さんはいかがですか?

辻尾:引き続き主に法人営業を担当いたしましたが、チームの成績が芳しくなかったこともあり、パートナーの皆さまからさまざまな想いをお聞かせいただく機会が多かったです。改めてクラブとして襟を正して前を向かないといけないと強く感じた一年でした。

残念ながら降格という結果で多くの方々に悲しい思いをさせてしまいましたが、パートナーの皆さんの率直な想いを知れたことは、私としては非常に貴重な経験になりました。

廣井クラブキャプテン(左)、辻尾クラブアンバサダー(右)

能登半島地震の発生によせて

岡田:2023年の最終戦、雨と涙の混じり合ったあの西部緑地を経て、新体制や新加入選手の発表があり、さあ一年で返り咲こうという機運が盛り上がってきたなかで、元旦に能登半島地震が発生しました。

私は元旦は金沢市内にいましたが、最初の地震はあまり大きくなかったので大丈夫かなと思っていたら、その1~2分後にドンときて。これはまずいんじゃないか、自宅へすぐ帰ろうと。帰ったら棚のものが散乱してぐちゃぐちゃでしたが、幸い大きな被害はありませんでした。ただ、能登が本当にひどかった。ニュースを見て愕然としました。

廣井:私は当日北陸にはいませんでしたが、それでも強い揺れは感じました。能登出身の知人や友人が帰省していて、元旦から避難所に留まり、三が日が明けてやっと金沢へ帰って来れたという話も聞きました。

岡田:ツエーゲンは石川県全域をホームタウンとするクラブである以上、何というか、背負うものができてしまった。

廣井:まさに、選手もチームも、もう一つ背負うものができて、頑張る理由が増えたと思います。震災は本当に大きなショックで、復興への道はまだ始まったばかりですが、だからこそ我々の仕事であるスポーツでは一つになって戦うための力として、このマイナスの出来事を少しでもプラスへ作用させなければいけない。チームもそう感じているんじゃないかと思います。

J2昇格を成し遂げることが、結果的には能登のみなさんに対して前向きな気持ちを提供できることにつながると考えています。そのために、クラブとして今できることをしっかり見極めたいです。

辻尾:今回の能登半島地震ではサポーターの方が被災されたり、私の知人でも亡くなられた方があり、本当に大変なことが起きたんだと、苦しい思いがあります。

どういう表現が適切か分かりませんが、クラブとしては、勝つことで勇気を与えるという点は、継続してこだわっていきたいです。そのためにできることは何でもやりたいと思っています。

また、復興支援は短期的なものではなく長い時間がかかることだと思います。私も廣井さんもクラブスタッフとしてだけでなく、個人としても活動していきたいと考えています。

スポーツは誰かの力になれる

岡田:今日(取材日は2024年1月31日)でちょうど地震発生から1か月が経ちます。

緊急フェーズから復旧フェーズ、そして復興へと続く道のりの中で、人々の関心や課題意識は変わっていきます。今は毎日たくさんの報道がされていますが、おそらく一年後、いや半年後でもメディアの関心はだいぶ減っているはずです。だからこそ、石川県に住んでいる自分たちに何ができるか、どういう未来をつくるつもりなのか、そこが問われてくると思います。

廣井:まさに長い尺で議論していかないといけない話だと思います。クラブのホームタウン活動で石川県全域にお伺いしてきていますが、これからよりそういう支援につなげていかないと。

岡田:振り返ると、東日本大震災の 2011年はベガルタ仙台が躍進した年でしたし、2016年の熊本地震ではロアッソ熊本のホームスタジアムが一時期使えなくなり、他のクラブの協力によって他スタジアムで行ったりと、サッカーファミリー全体で助け合おうという機運が生まれました。

スポーツはある種の復興のシンボルとなり、誰かの力になることは確実にあると思います。

イオンモール白山での募金活動をはじめ、豊田選手がサガン鳥栖さんと共同で募金活動をされていたり、畑尾選手がチャリティー活動を行われていたりと、みなさん精力的に活動されていますよね。本当に、今年はみんなでがんばる年になりそうです。

新しいスタジアムで、新しいサッカーを

岡田:改めて新シーズンに向けての展望をお聞きしたいです。

廣井:チームに関しては、監督も強化部長も代わり一新しました。キャンプに参加させてもらったのですが、雰囲気も明らかに違いました。今年はコミュニケーションが以前よりも活発になっていますし、志向するサッカーも大きく変わり、選手たちが新しいスタイルを学んでいこうと前のめりになっている印象をすごく受けています。

私自身とても楽しみですし、観に来てくださるサポーターやパートナー企業のみなさんも、新スタジアムで魅せる新しいサッカーに期待してほしいなと思います。

そしてやはり、勝利してみせて、最後には皆さんと一緒に泣いて喜ぶ。これが今年の最大の目標です。

辻尾:私はやはり、役割として法人営業をしていますので、その成果をしっかりと突き詰めていくことですね。それがひいてはチームの強化、来年以降の予算確保にもつながっていくので、目の前のことをコツコツとやっていきたいと思います。

岡田:昨年のことがあったので正直悩みましたが、辻尾さんとお話しして、2024年はゴールドスポンサーとして応援させていただくことにしました。

辻尾:ありがとうございます(笑)

岡田:先日金沢スタジアムに行かせていただいたのですが、J3 どころか J 全体で見ても高いクオリティのスタジアムですよね。近代的で機能的。サイズもちょうどいいです。

余談ですが、昨年のホームでの清水エスパルス戦は、アウェイ席が満員でホーム席もほぼ黄色という、ほとんどジャックされた状態でしたが、とにかくスタジアムの雰囲気がすばらしかったです。清水はお二人も所属されたチームですが、私の知ってる Jリーグはこれだ!と思いました。

そして金沢スタジアムは屋根で声援が反響しますし、ピッチも近く迫力が出る構造になっています。きっと今までとは違う素晴らしい観戦体験になるはず。そうすると、リピートのお客さんも徐々に増えていくと思いますし、そこに成績がついてくれば更に前向きな力になってくるはずです。

メインスタンド南側から

私はクラブの人間ではないですが、ツエーゲンが盛り上がってくれるとやっぱりサポーターとしてもスポンサーとしても嬉しいです。

廣井:これだけ整ったら、あとはもうやるしかないですね。

辻尾:私自身も期待していますし、みなさんにも期待してほしいです。

岡田:今年のスローガンである「新生」のごとく、大きな変化の中で生まれ変わる一年になると期待しています。本日はありがとうございました!

2024年のスローガンは「新生」

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