動画視聴キャンペーン(YouTube広告)を実施している Google広告アカウントに、以下のようなメールが送信されている。

どうやら、2025年4月からは動画視聴キャンペーンのデフォルトが「マルチフォーマット広告&目標広告視聴単価(tCPV)」となり、視聴目的のキャンペーンで一般的に使われている上限広告視聴単価(Max.CPV)は使えなくなるということらしい。(なお、現在のキャンペーンの設定はそのまま継続できるようだ)
Search Engine Land にも同様の記事が出ている。
ヘルプはすでに更新されていて、「動画視聴の入札戦略は、目標広告視聴単価(CPV)です。」と明記されている。つまり検索などのキャンペーンと同じようにデフォルトは自動入札となり、マニュアルで上限単価を指定する方式は(少なくとも新規キャンペーン作成時は)なくなってしまうようだ。むーん。
ただし、よく読んでみると以下のような記述もあり、マルチフォーマット動画広告にしない(特定の配信方法を設定する)場合は、引き続き上限広告視聴単価が使えるようにも読める。
マルチフォーマット動画広告を使用しないと、入札戦略は上限広告視聴単価に切り替わります。上限広告視聴単価では、このキャンペーンで 1 回あたりの視聴に対してお支払いいただける金額の上限額を設定します。
一般的にはデバイスやフォーマットごとに動画を出し分けたりすることもあるので、もしこのヘルプどおりであれば助かる広告主は多いだろうと思われる。
「上限」と「目標」は似ているようで異なる
この記事はあくまでリリース時点(2025年1月22日)に脊髄反射的に反応して書いているだけなので、もう時間が経ってからでないと断定的なことは何も言えないのだが(ですので詳細が分かった時点で更新します)、少なくとも Google 広告から「上限を設定する」という入札戦略が徐々になくなっていく流れなのは間違いないだろう。
上限単価と目標単価は似ているようで異なる。上限単価は文字通り「いくらまで入札していいよ」というアッパーを指定するものだ。動画の場合は視聴単価であり、検索やディスプレイであればクリック単価の上限を決めるという方法のことを指す。
運用型広告のオークションが RGSP を基本にしている以上、この「視聴」や「クリック」の可能性が品質として加味され、上限単価と合わせて eCPM の根拠になっていく。視聴であれば pVTR、クリックであれば pCTR が広告の品質の一部として評価され、それと上限単価のかけ合わせがインプレッションの価値としてランク付けされるということだ。
これは入札モデルには依存しないグランドルールだ。自動入札でも手動入札でも特に変わらない。目標単価制度とは要するに「上限単価を指定する権利」が広告主から奪われているだけで、オークションのルール自体が変わったわけではないのだ。
動画キャンペーンは広告費として課金されるタイミングが視聴(30秒以上再生 など)なので、プラットフォームからすればできるかぎり視聴されやすいユーザー、デバイス、フォーマット、タイミング、クリエイティブなどを優先したいと考える。
YouTube のマルチフォーマット広告であれば、それらの各要素はシステム側で自動調整されて最もパフォーマンスがよいと予想される( ≒ pVTR の高い)オークションを優先するから、入札戦略は「目標」にして自動化していたほうが都合がいい。上限単価の場合、仮に高いパフォーマンスが予想されるオークションに参加しても、単価のアッパーによって eCPM が広告表示の閾値を上回れないというリスクがあるので、配信面やタイミング、ユーザーなどが目標単価制と比して限定されてしまう可能性があるからだ。
こういう事態が続くと RPM(1,000回表示あたりの売上)に影響が出てしまう。RPM の最大化のためにはカバレッジ(広告が表示されるインプレッションの割合)が多いほうがいいわけだから、個別のオークションに参加するときの単価はなるべく自由化しておいて、最終的に広告主が設定した単価目標に合うように帳尻を合わせられるほうが都合がいいということになる。

上限単価が生き残る可能性
言い方を変えれば、目標広告視聴単価制は、配信面や配信方法を指定しないマルチフォーマット広告以外ではワークしにくいということになる。
広告主が自社のキャンペーンの特性に合わせてデバイスや配信面を限定したいと考えた場合、目標単価が相場より低い場合、プラットフォーム側の調整弁が少なくなる(パフォーマンスと配信量がバランスしにくい)ので、結果的に配信がされにくくなったり、微妙な面にばかり出たりしてしまう。YouTube にとってもカバレッジや単価が減ったら意味がないのだ。
そう考えると、上限視聴単価は急に消滅することはなくしばらくは生き残りそうな気がする。なくなる時がくるとすれば、それは YouTube広告がデバイスやフォーマットの指定が一切できなくなるキャンペーンのみに絞られたときだろう。
すでに P-Max という前例があるのでどうなるかわからないですが、、、さてさて。